宗教別の埋葬事情。感染症による社会情勢でどう変化していくのか

生死の問題と直結していますので、埋葬関連の事柄と人間は不可分であり昨今のコロナ騒動であってもその事は変わりません。ですが、埋葬法に関しては宗教別で結構変わる部分が多い物です。そこで今回、世界三大宗教として挙げられる仏教とキリスト教、そしてイスラム教にてそれぞれの埋葬法や埋葬に付き物の感染症関連の事柄に関してポイントを述べて行く事とします。
「文化=心の原風景=それが最も強く出る儀式としての埋葬」と考えた上で、それぞれの埋葬法の考え方を確認すると思わぬ発見がある事も少なくありませんので、興味がある項目がありましたら確認してみて下さい。

仏教の埋葬法と考え方について。

まず、現在の日本では衛生面の問題もあり火葬が一般的に広がっています。(※土葬もやろうと思えば可能ですが許可を取る必要あり)仏教の教えとしても、「人間は死んだ場合には、次の生へ旅立っていく」という考え方を採用していますので、「この埋葬法はNGである」という定義も無いです。実際、日本では法律問題で実施不可能ですが、海外の方では遺体を解体して鳥に処理させる鳥葬や、水に返す水葬等の方法も行われています。土葬に関しても例外ではなく、神道の方では火葬はNGですが、以前は日本でも普通に実施されていました。
ただ、感染症の目で見た場合は日本に限って言うならば、火葬以外は色々問題があります。まず遺体は特定の処置を施した例外を除外するなら、腐敗します。その際死臭が発生しますし、有害なバクテリア等も避けられません。他国の鳥葬等のケースの場合は、風土的に土に還るのに大きい時間が掛かってしまう為採用されている等の事情もあります。
他にも、遺体を単純に土を掘って埋めただけだと獣が荒らしに来てしまい、時間が経過し感染症の発生源となりかねない遺体が四散して掘り返されてしまうケースも報告されています。そのまま獣に居つかれてしまうのも問題ですし、遺族の心情面でも肉親の遺体の酷い姿を見せつけられてしまうのは酷いショックを感じると言わざるを得ません。

キリスト教の埋葬法と考え方について。

メジャー所のキリスト教のカトリックでは「死は審判の日までの長い眠り」と考えています。「この世の終わりにて、その眠りから目覚める事になっており、その時に神様により天国へ行くのか地獄へ向かうのかを決められる」という事で、死者は他の宗教の様に、「終わったもの」として見なしません。ですので、遺体を火葬してしまうという事は、審判の日の前に消滅してしまう事になってしまいますので、現在に至るまで埋葬法では土葬を採用しています。
ですが現実問題として遺体を原因とした感染症の発生問題であったり、国による法律の違い等もあります。他にも事故や災害等で遺体を維持出来なかった場合等、複雑な事情がある場合もありますので、昔日程厳守しなければならないという様子では無くなっている所も無いではありません。
ちなみに、カトリックの分派であるプロテスタントがメジャーである英国やドイツの方等の北部ヨーロッパ圏においては、合理性や公衆衛生面の方と折合いを付けるという事で火葬が結構普及しています。

イスラム教の埋葬法と考え方について。

イスラム教の埋葬法と考え方について。

キリスト教と同じくユダヤ教を根幹とするイスラム教も、やはり聖典のコーランに記されている「復活の日」に死者は蘇生すると考えられています。言い換えると、「死=一時的な休眠」というのが近いニュアンスであり、火葬してしまうと消滅と同意という事になってしまうので土葬が埋葬法の中心です。心情的な問題もあり、コーランには「生前悪事を働いて憚らなかった様な者は、死後に地獄の業火で焼かれる罰を受ける」という趣旨の記述がある事もあって、近しい人が亡くなったとしてそれを連想する様な埋葬法を選択出来るのかという事も出てきます。
当然、イスラム教と言っても一枚岩ではなく、中には色々な事情を考慮し折合いを付けている分派も無いではありませんが、海外の方でもその辺りで深刻な悩みを抱えてしまうケースも多いとの事です。日本の方でもそれは例外ではなく、日本在住のムスリムで土葬がOKな墓地を探すので苦労している人は少なくありません。(※土葬と火葬の文化の分かれ目として、遺体がどの程度環境で劣化してしまい感染症等と直結してしまうのかという点があったという見方もあり)

世界での土葬と火葬の普及率と豆知識について。

日本においては、99,7%が火葬であり土葬をする場合は許可を確保する事と土葬がOKな墓地を探さなければならない等の多くの関門があります。ただ、世界全体で見た場合はやはりカトリックやイスラム等の考え方の国も多く、全般的は半々と思っておくと齟齬がありません。日本においても、明治になった前後程では土葬が10%程度だったというデーターもありますので、その意味では、決して無関係だったという事ではない事も補足しておきたいポイントです。(※土地を広く使うという点でも、土葬は場所を取ってしまうデメリットがあり日本ではそれが痛かったという見方も)
ちなみに、海外では遺体が腐敗する事で発生する感染症や宗教の教えとの折合いを付けるという点でエンバーミング処理が普及していたりもします。これは遺体から血液を抜いて防腐剤を入れたり、見栄えを整える処理であり、これを行っておけば通常の遺体の様な劣化は発生しません。日本の方でも昨今、普及してきており、業者によっては15~20万円程で請負ってくれる所もあります。

まとめ

仏教は禁忌の埋葬法は特になく、キリスト教とイスラム教は教義の関係で土葬を採用しているケースが多いです。(※プロテスタント等の例外項あり)火葬と土葬の分水嶺としては、遺体が土に還り難い関係で鳥葬や水葬が採用される様な事も関係しています。ただ、火葬以外の方法では相当注意しないと遺体劣化に伴う感染症の発生という問題があり、日本では土葬は不可能ではありませんが、出来る場所は極限られて来ます。ちなみに、海外では感染症対策の一環として遺体への防腐処理のエンバーミングが普及している事等も押えておきたいポイントです。後はコロナ後も文化根幹部と考えると、土葬が減るという事は無いという見方もあります。

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