厳冬のロシアではウォッカが好まれていることを知っている人が多いです。そんなロシアでは、葬儀の際にもウォッカが飲まれているという噂を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。噂に過ぎないと考える人もいるかもしれませんが、これは事実だと言えます。ロシアで葬儀に参加する必要がある場合もそうでない場合も、厳冬の国ならではの日本とは違う葬儀事情があることを知っておくことがおすすめだと言えるでしょう。
ロシアでは葬儀でウォッカが振る舞われる
ロシアにはご遺体が埋められる様子を家族や弔問客で見守った後に、食堂や自宅などで追善供養を行うという風習があります。故人の親戚などが挨拶を行った後に、弔問客で食事をとることになるケースが一般的です。クチヤーという名前のコメと干しブドウでつくられたお粥を食べた後に、ブリヌイというクレープを食べることになります。それらと同時に、ウォッカやジュースが出されることが多いです。飲酒が解禁されていない年齢の参加者はジュースを飲みますが、大人はウォッカを飲みながら故人に思いを馳せたり、参加者同士で故人の話をしたりします。日本ではビールや日本酒が振る舞われることがありますが、ロシアの葬儀の場合はほぼ確実にウォッカが振る舞われることになると知っておくと良いです。大人であれば全員がウォッカを飲まなければならないというような決まりはありませんが、飲みたい人は飲むことができるように準備されています。
故人にもウォッカを用意する
ロシアの葬儀では追善供養の際に弔問客にウォッカが振る舞われるわけですが、このときには故人用にも用意されることが特徴的だと言えます。日本では追善供養の際に必ずしも故人の席を設けるわけではありませんが、ロシアの場合は故人の席をしっかりと用意し、そこにウォッカが入ったコップが置かれることになることを知っておきましょう。飲酒解禁の年齢に達していない場合やアルコールが苦手だった場合はウォッカ以外に水が置かれることもありますが、多くのロシア人の葬儀では故人用にウォッカが用意されることになります。追善供養の際に設置されるだけではなく、墓標が完成した後や故人の命日などにもこれが供えられることが一般的だと言えるでしょう。日本でもお酒が好きだった故人のためにビールや日本酒、焼酎などのお酒が供えられることがありますが、ロシアの場合は多くの人が好んでいるウォッカが選ばれることになると知っておくと良いです。
弔問客は寒い中でも土葬を見守る必要がある
葬儀でウォッカが出される理由には、ロシアで葬儀を行うと寒い中で土葬を見守る必要があることも関係していると予想されています。ロシアでは死後3日目に埋葬式が行われることになりますが、火葬ではなく土葬が採用されることが多いです。埋葬式当日はご遺体を棺に入れ、故人に近しい参加者たちが墓場に向かうことになります。墓場では故人のものや十字架が入れられたり、教会の聖なる土がかけられたりする様子をみんなで見ていることになる場合がほとんどです。墓掘り人が掘った穴の中に棺が入れられた後は、小さな山ができるまで土をかぶせていく作業を行うことになります。最終的には身内が山に枝や花を飾ることになり、寒い中でも長時間土葬を見守ることになるでしょう。冷えた身体を芯から温めるためにも、弔問客にはウォッカが振る舞われることになると言えます。お酒には悪いものを遠ざける役目があること、水の代わりに当たり前のように飲むものであることも理由としてあげられますが、こういった事情からもウォッカが必須であると知っておくと良いです。
厳冬ならではの風習は他にもある
厳冬のロシアならではの風習は他にもあります。日本ではお墓に生花が供えられることが一般的ですが、ロシアは生花を供えることが難しいケースも多いです。寒い時期にお墓参りをする場合に生花を選んでしまうと、すぐにダメになってしまう可能性が高いからです。そのため、お墓参りの際には造花が選ばれるケースも多いです。市場でも造花屋さんを多く見かけることができたり、町で造花を持って歩く人を見かけたりすることもあるかもしれませんが、お墓のお供えのために売られていたり買われていたりすることが多いことを知っておきましょう。他には、日本のように服装に明確なルールはなく、葬儀の際に好まれる色はあるものの温かい格好で参加することができるという違いもあります。ロシア正教の教会に入るときは男性は帽子を外し、女性は頭を何かで覆う必要がありますが、そういったルールさえ守っていれば服装の自由度は高いと言えるでしょう。
まとめ
日本の葬儀のことしか知らなければ、ロシアならではの葬儀事情に驚いてしまうかもしれません。どの国でも独自の決まりがあるように、ロシアでは寒さが厳しい国ならではの風習があることを知っておくと良いでしょう。国際結婚をした場合や海外に友人がいる場合などは、ロシアで葬儀に参加することもあるかもしれません。参加したときに驚いてしまったり、マナー違反となったりすることがないようにするためにも、紹介したロシアならではの風習を知っておきましょう。